恐怖が新しい道を拓いた

2024年は新規事業への挑戦と怠惰の1年だった。

いわゆるプチ鬱状態に陥り、従業員たちに顔も見せず週に2回ほど情事におよんでいた。ほぼローテーションだったがスタメン女性は7人いた。現実を直視することができず、短期的な快楽に逃げていただけだったんだなと今になってやっと冷静に考えることができる。

中途半端な恐怖は使えない

2023年時点で稼ぎ頭の事業が傾き始めていた。稼ぎづらくなってきた傾向はもっともっと前から感じていたけれど、PLをみていて「あぁ、終わるな」というのをやっと実感したのが2023年。事業を潰し従業員を解雇するという選択肢もあったが、義理人情がゆるさなかった。

大手企業の下請け100%の事業だったため受注量のコントロールがほぼできない。市況がよければ儲かり、そうじゃないときはやることがないのが下請けの宿命といえる。この事業では5年ほどおいしい思いをさせてもらった。大手企業とのアライアンスを結ぶまでが大変だったけれど、あとは得意の採用→教育→戦力化で売上・利益ともに「ちょうどいい状態」を維持できたのだ。

なにもしなくても年収1000万円程度の仕組みができたため、高級住宅地の大きな家に住み、家族が欲しいものは脳死で買った。昼間っから酒を飲み、女性関係の開拓もどんどん進んだ。この時期に仲良しになったフレンドが冒頭のスタメン女性たちだ。いわゆるクラスに1人いるかいないかの美人あるいは可愛い子で、学生から女性社長まで人格的にも素晴らしい女性たちと明るい時間帯にホテルで濃密な時間を過ごした。

この生活ができなくなってしまうのが嫌だった。

手に入れたものを捨てるときが一番勇気がいる。一度あげてしまった生活レベルを下げるのはとてもむずかしい。ただ「その程度の恐怖心」では大した結果につながらないと思い知ったのがその後のことである。

行動する程度なら誰でもできる

従業員の雇用は維持したい、この生活も維持したい、となればあとは行動するだけである。業績が傾きかけてから新規事業の構想自体はずっと考えていたため、必要なのはアクションにうつすこと。

2023年の後半は新規事業の準備に動き回った。そして2024年に新規事業をスタート。既存事業の残りカスみたいな仕事を片付けつつ、従業員の半分を新規事業へとジョイン。6ヶ月程度をかけて既存事業から新規事業へとピボットさせた。

前向きに取り組んでくれる社員、変化を嫌い会社を去った社員、不慣れな新しい仕事、所有しているサブ事業の経営など問題は山積みだった。無限にあるタスクをこなしながら、新規事業を軌道にのせるべくあらゆる手を尽くした。しかし、ここで大きな問題に気がつくことになる。2024年も半分がすぎ、あたらしい働き方にも慣れてきた頃に資金ショートの可能性がでてきたのだ。

それもそのはず、これまで翌月末には入金があった事業の入金サイクルが大きく変化し、最初の半年はまったくといっていいほど入金が見込めなかった。

本来であれば先を見据えて固定費を軽くしておくべきだったのだが、一度上げてしまった生活レベルを下げることはできず、役員報酬や役員社宅、交際費などはまったく削ることはしなかった。新規事業も手探りで進めている部分も多く、マーケティング予算も相当無駄にした。極め付けは集客サービスの詐欺にあってしまい、大金を失ってしまった。詐欺師には義理人情なんてものは持ち合わせていないのである。

結果として、2024年の1年間の間に2つの銀行から借入を合計で3回行う。自分でもよく借りられたなと思った。ブランド品や時計や車も現金化し会社の資金に充てた。それでも毎月のように大きな赤字が続き資金ショートの可能性が常に頭の中を支配するようになった。

全てを失う感覚

起業してからというもの、激務や人間関係のストレスで怒り狂うことはたくさんあったが、「全てを失う気がする」という予感みたいなものは不思議となかった。ただただ全力で走り抜けてきたから周りが見えてなかっただけのような気もするけど。

毎月のPLを眺めながら、ものすごいスピードでお金が消えていくのは人生で一番の恐怖だったかもしれない。これまで何も感じずに払っていた請求書に恐怖を感じる。口座の残高がどんどん減り、少しずつ買い集めてきたブランド品やお気に入りの時計といった身の回りのものもどんどんなくなっていく。

朝は吐き気と共に目覚め、日常的に動悸がする。3つ事業を所有していたが誰にも会いたくなかった。従業員と会わずに毎日なにをやっていたかというと、宝くじを買い、女性とホテルに行っているだけだった。自分よりも一回り年下の女子大生とホテルに行き、おっぱいを吸って射精する。そして宝くじで1億円を当てる妄想をすることで現実から逃げていた。

2024年の11月、いよいよ倒産も秒読みとなってきた。圧倒的にキャッシュが足りない。現金化できるものも残りわずかのところまできた。別事業の売却も検討したが、なぜか前向きに進める気にはなれなかった。いつものようにホテルで女性の中で果てたあと、部屋の天井をぼーっと眺めていると「まだやれることあるよな」とふと思った。

本当の恐怖だけが行動に駆り立てる

頭の中でぐるぐる考えているときというのは思考のスピードが早すぎて、脳の処理が追いつかない。だから、まずは1人でノートにじっくりと思っていることや考えていることを書き殴った。

【プランA】倒産&破産

  • 手続きに200万程度のお金が必要
  • 親戚や周りの人の目が痛い
  • 就職したとしてちゃんと勤められるか
  • 従業員の生活はどうなるんや?
  • また1からスタート

【プランB】立て直す

  • 現実を直視してやることをやる
  • 人任せにせず現場に出る
  • 無駄を削り止血する
  • 売上を上げるためにできることをやる
  • 立て直せれるなら0リセットよりいい

迷わずプランBを選ぶが、この時やっと冷静になれた感覚があった。もうやるしかねぇという状態だったから迷いは一切ない。プランBで進めつつ、ダメだった時のために(破産してサラリーマンからやり直すパターン)、短期トレードで稼げるようになっておこうと思った。

これまで個別株・ヘッジファンド・現物投資など、長期投資では満足のいく結果を出してきたが、いかんせん種銭が必要なうえに時間がかかるのが難点だった。デイトレードで稼げるようになっておけば、仮に倒産してもすぐに復活できるのではないかと思い、2024年12月に事業再建に本腰を入れるのと同時にトレードの勉強を開始した。

ここからの行動はわかりやすかった。止血するために不要なものを仕分けし、どんどん無駄なものに使うお金を減らしていった。役員報酬や交際費などもドカンと減らし、現時点でまだ途中だがおおよそ年間で数千万円程度の削減につながった。雑になっていた事業ごとのマネジメントとKPI管理のマイルールをつくり直し、人任せになっていた店舗にもちゃんと足を運ぶようにした。会社は経営者の器次第だというが、まったくもってそうだなと反省している。現実から目を背けてちんちんを振り回している場合ではないのだ。

逃げずに立ち向かうことだけが成長につながる

2024年は常に不安だった。吐き気と動悸が1日中続いていたが今は一切ない。倒産の危機?もちろんまだまだ危険水域である。僕の目線が「逃げ」から「立ち向かう」に変わっただけで、精神的にすごく楽になることができた。どんな状況でもとにかく前に進むことが大事のようだ。

しんのすけ

『お前、逃げるのか?お前偉いんだろ!だからこんなことになったんだゾ!なのに逃げるのか?』

『全部お前のせいでこうなったんだゾ!逃げるなんて許さないゾ!』

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦

頭をハンマーで叩かれたような感覚になった。こんな簡単なこと幼稚園児でも知っているというのに、いったいなにをやっていたのか・・・。逃げずに立ち向かう。やれることは全部やる。中途半端な恐怖ではなく、資金繰りによる吐き気と動悸、そして全てを失うという恐怖心があらためて自分を突き動かすのだなと思った。やるぞ。